現在の市の構想
中央公園配置図
(市の報告書より)
- 広島市総合計画の基本構想と基本計画 ・市は未来を見据えた計画的な都市づくりを行うため、新しい基本構想と第5次基本計画を2009年に策定
- ひろしま都心ビジョン ・2005年に策定され、2030年頃を長期目標として、都心部の将来イメージの実現に向けた取組を提示
- 旧市民球場跡地利用計画 ・広島市民球場の移転に伴い、跡地利用の計画が進められている。跡地エリアと周辺とのつながりも検討されているが、インターフェイスのみで、大局的な視点に欠けている。
・第5次基本計画は2009年度〜2020年度を計画期間とし、街のたたずまいがそのまま「平和」の具現化を実感できる「世界のモデル都市」を目指す。
・都心部として紙屋町・八丁堀界隈から広島駅周辺まで広げたエリアを想定し、主に「街の活性化」を図るビジョンのため、平和公園や中央公園の将来像が欠如
・中央公園の中にありながら、中央公園全体のビジョンがないため、跡地エリアの位置付けも定かでない。
現状
1949年に「広島平和記念都市建設法」が制定され、広島平和都市建設事業として中央公園も順次段階的に整備されています。
1957年に市民球場が公園内に完成、その後、県立体育館・広島市立中央図書館・ひろしま美術館等の文化的な公共建築が整備されました。
1978年、公園の北側に高層の市営基町住宅が完成し、公園内の老朽化した木造公営住宅を撤去した後に芝生広場が整備され、ほぼ現在の中央公園が形成されました。
- 平和公園とのつながり ・平和公園と原爆ドームは川を挟んで対峙しているが、一体のものとして世界遺産に登録されている。
- 文化的な公共建築エリア
- 環境護岸エリア
- 芝生広場エリア
- 広島城エリア
- 中央公園の周辺
- 北側 : 公営住宅街区 ・中層の公営住宅は築40年以上、高層住宅も築30年以上が経過しており、将来的には建替える時期が到来する。
- 東側 : 官公庁街区 ・基町の官公庁一団地に指定されており、中国地方の中核的な国の機関や県庁等が集中している。
- 南側 : 都心地区 ・公共建築エリアを含む街区の一角をそごう・バスセンター・基町クレド等の大型商業施設が占めている。
- その他 ・公園の街区の一角に建つ商工会議所、PL教団、護国神社駐車場の民間施設は中央公園エリアから除外されている。
・平和公園と中央公園との間には路面電車が走る相生通りがあり、中央公園の道路側に大容量の球場スタンドが横たわっているため、平和公園側からの流れを完全に遮断している。
県立総合体育館
・各施設単位に管理運営されているので、集積効果が発揮されていない。
・道路で分断され、垣根があり、敷地境界の意識が強く、各施設のデザインもバラバラなので、このエリア全体の統一感に欠ける。
基町環境護岸
・中央公園と基町環境護岸とのつながりを商工会議所・PL教団等の民間施設が遮断している。また川沿いの建物も川に背中を向けている。
・基町環境護岸と芝生広場はオープンスペースでつながっているが、護岸上の道路で分断されているため、一体的な利用は少ない。
芝生広場
・日常的な利用がなく、閑散としている。特に、このエリアにある渝華園は孤立感が強く、人気のない閉ざされた空間は危険さえ感じる。
・消防車の出初式、春秋の植木市、秋のフード・フェスタ等、年に数回イベント等で利用されるが、緊急避難時等の予備的なスペースの意味合いが濃い。
広島城
・1994年に表御門・平櫓・多聞櫓・太鼓櫓が木造で復元され、城郭らしくなる。
・城址内に護国神社があり、初詣等の祭事には参拝者で賑わう。
公営住宅
・高層住宅の方は地上がピロティとなっており、公園との連続性を保つことは技術的に可能と思われるが、住居機能を維持するためには一体化は困難である。
・中層住宅は機能的に劣化が顕著であり、近々に建替えの時期がやってきそうだ。
・役所の性質上、夜間や土日等の閉庁時は人通りも少なく閑散としている。
・一方、オープンスペースが多く、広島城エリアと街中の喧騒との緩衝地帯の役割を果たす。
・中央公園の南側には本通街や地下街があり、繁華街と平和公園が川を挟んで東西に隣接している。
・商工会議所は慰霊碑・原爆ドームの軸線上の背景にあり、景観を損なっているため、移転する予定である。
構想提案
- 中央公園のコンセプト
- 公共建築ゾーン(1−1〜4) *(1−1) : 球場跡地にキャンパス(芝生広場)と周囲の文化的な公共建築をつなぐ「文化の杜センター(仮称)」を整備
- 広場ゾーン(2−1〜2) ・緊急時の利用も想定した多目的スペースとし、2020年のオリンピック招致に成功した暁にはトレーニング場として整備する。
- 環境護岸エリア ・商工会議所ビル等の民間施設が移転した跡はオープンスペースとし、環境護岸エリアと中央公園の一体化を図る。
- 中層公営住宅跡地(3) *(3) : 公園を拡張。オリンピックが開催される場合は選手用の宿舎を整備
- 各ゾーンの一体化 ・道路で分断された各ゾーンは幅広の地下連絡道又は立体歩道橋を整備し、自由な往来を可能とする。
- 平和公園との関係
・広島平和記念都市建設法に基づき、広島市のビジョンである「国際平和文化都市」の核として、平和公園と中央公園を位置づける。
・国際平和都市のコアが平和公園であり、中央公園を国際文化都市のコアとし、両者が一体となって平和文化を国内外に発信する。
*(1−2) : 既存のひろしま美術館及び市立中央図書館
*(1−3) : 既存の県立総合体育館
*(1−4) : ファミリープールの跡地に観光バス等の駐車場を整備
・平時においてはグランド部分(2−1)をソフトボール等の球技場として活用し、芝生広場部分(2−2)に現ファミリープールを移設する。
フラワーフェスティバル時
・市民球場跡地にキャンパスと「文化の杜センター(仮称)」を整備し、平和公園を観光した人達が中央公園に流れて、広島市民と気軽に交流できる環境とする。
雑感
秋の市議会の議決を経て、新しい広島市総合計画の基本構想と第5次基本計画が策定されたばかりです。中身をよくおさらいして、私の提案との整合性を図る必要があります。
広島・長崎の両市長が2020年オリンピック招致のアドバルーンを揚げ、多くの自治体で賛同の動きが広まっています。複数都市による共同開催の是非等のクリアすべき課題が山積していますが、核兵器廃絶の実現を記念する「平和の祭典」の大義には多くの人が共感しています。これから施設の受け入れが可能か否かの基盤整備の検討も必要となってきます。
平和記念公園の設計コンペで当選した丹下健三氏が1950年に、設計コンペ案の概念を更に発展させた「広島平和都市建設構想案」(右図)を提案しました。
7月のシンポ「広島平和記念都市建設法」のパネラー藤本昌也氏(日本建築士会連合会会長)は基町公営住宅を壊す時が来たら、公園に戻してもらいたいと本音を吐露しました。基町高層住宅の設計に従事した方の発言だけに重みがあります。恐らく念頭に丹下構想があったものと推察しました。
オリンピック招致活動が成功するかどうかはわかりませんが、これを契機に広島都市圏として広域的に街づくりを捉えることが望ましく思えます。その中心に平和公園と中央公園を位置付け、平和と文化を世界に発信する拠点として整備する必要があります。
旧球場跡地利用は原爆ドームの世界遺産のエリアを拡張するぐらいのインパクトのある計画を実現してもらいたいものです。
今回は中央公園全体のビジョンについて記述しましたが、次回からは各ゾーンの提案に挑戦する予定にしています。
(2009.12.1 記載)