旧広島市民球場跡地エリア計画私案(1)

上空写真
上空写真(市の報告書より)

前回、広島中央公園構想について検討しましたが、これからは各エリアの具体的な計画私案をシリーズで取組んでいきたいと思います。
広島市は、事業コンペの優秀賞2者に随意契約で球場跡地利用計画の具体化検討業務を発注しましたが、なぜか完成イメージ図の作成は見送っています。
どこか歯車の狂った市の対応に疑問を感じますが、予算の無駄をすることなく市民が誇れる計画を実現してもらいたいものです。

広島市の跡地利用計画概要

市の計画案




















中央公園配置図
中央公園配置図
(市の報告書より)
  • 基本的なコンセプト
  • ・広島市民が未来に向かって平和を実感し、広島の夢と希望を共有する場。
    ・子供から年寄りまで多くの人々が集い、憩い、楽しみ、夢を感じる空間づくり。

  • 東側ゾーン(大型商業施設側)
  • 森のパビリオン(レストハウス機能等)、商工会議所ビル、劇場・文化発信施設、外野スタンド一部保存等の施設群を配置。
    ・賑わいの施設を配置することにより、東側商業施設との一体感を図ると共に球場の記憶を残す。

  • 中央ゾーン
  • ・中央に市民広場を設け、その一角に折り鶴ホール(折り鶴保存・展示機能)を配置。周囲に市民の森。
    ・原爆ドームの後背地としての閑静な緑地空間と同時にイベント等の賑わいの場を創出する多目的な広場。

  • 西側ゾーン(環境護岸側)
  • ・既存の商工会議所ビルは移転予定。PL教団、青少年センター等も移転又は解体して、市民の森を整備。将来は水辺のカフェ・レストラン等を整備。
    ・水辺の環境護岸とオープン・スペースで連続させて、「水の都ひろしま」のシンボルとなる河川空間との一体化。

球場跡地エリアの現状

    中央公園配置図























  • 平和公園とのつながり
  • ・交通量の多い相生通りで分断され、商工会議所ビルと大容量の球場スタンドが横たわっているため、平和公園と中央公園は背中合わせの関係である。
    ・平和公園の祈りと静寂に対して、市民球場の賑わい・お祭り気分は復興の象徴として、長い間市民に愛された。

  • 文化的な公共建築群のつながり
  • 体育館
    県立総合体育館
    ・このエリアに図書館・美術館・体育館・こども科学館・青少年センター・旧市民球場等の文化・スポーツ施設が集中している。
    ・道路で分断され、敷地境界の意識が強く、各施設単位に管理運営されているので、集積効果が発揮されていない。
    ・大容量の球場スタンドはこのエリアの空間の広がりを遮断し、閉塞感がある。

  • 環境護岸とのつながり
  • 環境護岸
    基町環境護岸
    ・本川の中央公園側は基町環境護岸として親しみやすい河川空間が整備されているが、商工会議所・PL教団等の民間施設が中央公園と環境護岸のつながりを遮断している。
    ・こども科学館や青少年センター等の建物も環境護岸に背を向けた形になっており、環境護岸とのつながりを分断している。

計画私案

    構想案     
  1. 球場跡地エリア(1−1)計画のコンセプト
  2. ・中央公園を広島市のビジョンである「国際平和文化都市」の文化の核として位置づけ、球場跡地エリアは周辺の文化施設をつなぐセンター的な役割を担う。
    ・未来の平和を創造する場、「市民の生涯学習キャンパス」
    ・観光客も地元の人も、みんなに開放されたキャンパス

  3. 東側ゾーン
  4. 球場正面 : 旧球場正面のファサードを残し、このエリアの玄関とする。総合案内とレストハウス等を配置。
    オフィス棟 : 商工会議所をオーナーとするオフィス棟を配置。
    カルチャー棟 : 周辺の公共建築のセンター機能としてカルチャー棟を配置。
    展示ホール : オフィス棟とカルチャー棟をつなぐ場に展示ホールを配置。
    ・各棟の低層部を連結して一体的な空間とする。

  5. 中央ゾーン
  6. ・世界文化遺産のバッファーゾーンはグリーン・ベルト(市民の森)とする。
    ・原爆ドームの軸線上にシンボル的なアート(モニュメント)を設置。
    ・中央部に芝生を主にした多目的な市民広場(キャンパス)を配置。

    私案
  7. 西側ゾーン
  8. ・基町環境護岸とオープン・スペースでつなぎ、水辺のカフェ・レストランを配置。

  9. 公共建築群とのつながり
  10. ・カルチャー棟にセンター機能を持たせて、それぞれの公共建築の機能を補完し、強化する。

  11. 平和公園とのつながり
  12. ・平和公園が静かに「過去を学ぶ場」、「祈りの場」とするならば、その対極として中央公園には「今を学ぶ場」、「祭りの場」が求められる。
    ・市民広場(キャンパス)とカルチャー棟は、平和公園を観光した人達を誘導して、市民との交流の場とする。
    ・原爆ドーム側との連絡は幅広の地下連絡道を整備し、自由な往来を可能とする。

雑感

スケッチ

今回の球場跡地エリア計画私案も基本的には市の跡地利用計画の考え方に沿ったものです。事業コンペ優秀案で提案された「折り鶴ホール」と「森のパビリオン」の呪縛を解いて、このエリアのコンセプトを私なりにイメージ化しました。

優秀賞に選ばれたからといって、「折り鶴ホール」と「森のパビリオン」をシンボル的に扱おうとすれば、市の利用計画のコンセプトが曖昧になってしまいます。広島市は優秀案へのこだわりを破棄すべきなのに、出来ないため身動きが取れなくなっています。

私案では展示ホールの一角に折り鶴展示コーナーを常設し、球場正面を残す形でレストハウス等の中央公園の玄関機能を配置しています。商工会議所をこの地に移転させることには賛否両論あると思うが、この事業のスポンサーとして参画できるのであれば、民間活力を活用する上でも良いのではないでしょうか。

この事業の成功は市民の理解と協力が得られるか否かで決まります。市民の税金を投入する限りは、市民の納得できる計画案でなければなりません。市当局と市議会でにらみ合っているゆとり等はありません。時間をかけること自体が税金の無駄使いになるので、市には計画案を早く提示してもらいたいと思います。

今回の私案はブロックプラン程度のイメージ図ですが、今後逐次詳細を詰めていきたいと思います。

*ちょっとコーヒーブレイク : 『二人の愛

  (2010.1.15 記載)   
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