- Who(誰が) 発注者から建築工事を請負うのは一般的に総合ゼネコン(元請)で、施工全般の責任を負っています。現場に張り付いた元請社員も施工の一部を担いますが、実際の工事は各種専門工事業の職人が作業をします。
- Why(なぜ) なぜと言われても困りますが、発注者に対して適正に工事を完成させて引き渡すという請負契約を結んでいるからです。決められた工期までに完成させることが義務付けられています。それを守らなければ、対価としての請負代金を受け取ることができません。
- When(いつ) これも締結した工事請負契約書の中に決められており、契約した翌日から工期までの間に施工を終わらせなければなりません。工期を守らなければ、ペナルティ(違約金等)を課せられます。
- Where(どこで) 建築生産の大半は建設の現場で作業が行われます。雨や風等の天候の影響を受けやすいので、作業のできない日をあらかじめ計算に入れておきます。また、近隣に住居等がある場合は、騒音・振動等のクレームが発生しやすいので、事前に十分な根回しをすると共に作業時間等の要望を聞いておくことが大事です。
- What(何を) 何を施工するかといえば、それは設計図書に描かれたものを現場において具体の形にしていきます。形は平面図・立面図・断面図・詳細図等の図面と使用する材料や要求する性能等を記載した仕様書等で表現されています。
- How(どのように) 施工の品質は、どの材料を使用して、どのように作っていくかで決まります。作り込んでいく手順を「仕様」といい、設計図書の中の特記仕様書等に定められています。
元請が総合調整のうえ段取りをし、下請の専門工事業者が現場に入って担当部分の工事を施工します。元請の現場スタッフは工事の規模により違いますが、経理担当・施工管理担当・施工図担当等が配置されます。現場を代表する者として現場代理人がおり、建設業法で定められた元請としての外注総額3.000万円(建築一式工事の場合は4.500万円)以上になると監理技術者を置かなければなりません。
施工の品質管理は下請の自主施工管理を基本として、元請の施工管理、発注者側の工事監理、発注者の検査等重層構造になっていますが、今ひとつ役割分担・責任区分が明確ではありません。相互の利益が相反している場合は、信頼できる関係を築くのが困難となります。共通の利益目標を掲げ実行できるか否かが、現場代理人の腕の見せ所です。
現場での物作りだけでなく、建築材料・資材・機器等は工場で製造されます。工場でのメーカーの品質管理も建物の品質を確保するための重要な要素となります。建築は多種多様な人・物・金を織り込んで作られる総合的な生産品です。
ただ報酬を得るためだけではありません。発注者がその建物を活用することにより社会の役に立ち、発注者の求めに応じて建物を建設することは、人類の繁栄のための基盤を整備することになるからです。私財が投じられたものであっても、公共財としての価値を生むものを生産しているという自覚を建設業に関わる人々は持たなければなりません。
但し、工期内の施工の段取り・順番・施工の方法等は元請ゼネコンの裁量に任されています。期限の間際になってドタバタと施工するより、事前の工程計画通り余裕を持って施工する方が、品質上も安全上も優れていることは論を待ちません。
最近では、現場での作業を少なくするため、プレハブ化が進められています。極力、工場で部品を製造して、現場で組立てる工法を採用したり、部品を組立てる建設ロボットを開発したりしています。この傾向は今後とも進歩していくものと思います。
設計者から設計主旨の説明を受け、設計図書の意図を汲み取り、図面の不明な部分は確認のうえ、設計者との意思の疎通を十分に図ります。正しく設計図書を理解したうえで、各専門職種の職人の施工を管理します。
施工の仕様は、設計図書に指定されているものは図面通りにしなければならないが、それ以外は施工者の裁量に委ねられています。
現場で施工する前に、施工計画書・施工図・製作図等を作成し、段取りや細部の納まり等の問題点を解決します。発注者側の工事監理者の承認を得たうえで、職人の作業に着手します。
各専門職種の工程毎に検査をクリアさせ、次の工程に進みます。現実には現場が錯綜して、十分なチェックができなかったり、手直し・手戻りで予定の工事がストップしたり、やりくりでテンヤワンヤの現場も少なくありません。
生産環境の整った工場での大量生産と違って、現場での一品生産を多くの人の手で作り上げていく建築工事の品質を管理することは至難の技です。良き発注者・良き設計者・良き施工者の3拍子が揃って初めて良き建物が出来上がります。