アイデアコンペの公開討論会

公開討論会
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公開討論会
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案内パネル
案内パネル
作品展示
作品展示
作品展示
作品展示全景
作品模型
作品模型

アイデアコンペの最後のイベントとなる作品展示会(10月14日〜17日)と公開討論会(16日)を開催しました。
旧日本銀行広島支店1階の多目的スペースにおいて、旧事務室を展示スペースとし、旧ロビー(客溜り)を討論会の場としました。討論会は30名弱の市民が参加し、最後まで熱心に聴かれていました。
討論の中身も広島の町を良くしたいという熱い思いのこもったものであり、ここにその報告をしたいと思います。

概要

アイデアコンペの入賞者と特別審査員による「被爆100年の広島市中央公園のあるべき姿・そのコンセプト」を求めて討論会を行う。
  • 日時
  • 平成23年10月16日(日)14:00〜17:15

  • 場所
  • 旧日本銀行広島支店1階多目的スペース

  • 出席者
    • 入賞者
    • 堀弘明(広島市民)
      古池周文(広島市民球場跡地利用市民研究会)
      石原滋(広島市民)
      高橋志保彦(高橋建築都市デザイン事務所)
      大上泰弘(神戸大学大学院)
      田中雄其(名古屋工業大学大学院)

    • 特別審査員
    • 平岡敬(中国・地域づくり交流会会長、元広島市長)
      石丸紀興(広島諸事・地域再生研究所代表研究員、元広島大学教授)
      高東博視(安田女子大学非常勤講師、元広島市都市計画局長)(司会進行役)
      ナスリーン・アジミ(国連訓練調査研究所・本部長付特別上級顧問)

    • 実行委員会事務局
    • 前岡智之(実行委員会会長)

内容

        
  • アイデアコンペの前提ーー平岡氏
  • ・今回のコンペの精神的なバックボーンである広島平和記念都市建設法(以下、平和都市法)の歴史・目的・意義について説明
    ・この法律に基づき実施された平和公園の設計コンペの当選者丹下健三氏の「公園を利用することにより平和の営み、平和の活動をしなければならない」という精神を活かす。
    ・広島市全体の都市像を念頭に置いて中央公園を検討して欲しい。

  • コンセプトの例示
    • 平和発信ーーアジミ氏
    • 都市を復興させてすばらしい場所にした成功のモデルが平和公園の地である。平和公園と中央公園をつなげて平和のイメージを高めていく好機を今逃してしまえば、二度と来ないという認識を持ってもらいたい。

    • 祈り、賑わい、憩いーー前岡氏
    • 事務局なので事例紹介に止める。
      ・イサム・ノグチがその昔に原爆慰霊施設を計画し、今それを中央公園に設置する意見が出ている。
      ・建築家白井晟一(故人)が原爆の絵を展示するための平和祈念堂を計画。
      ・松井市長が旧市民球場跡地を若者が集う賑わいの場にしたいと発言。
      ・提案された72作品の内で一番多い緑・木・花・水・池等のいわゆる憩いの公園。

    • 意見
    • ・歴史と川を活かした町づくり、復興から未来へ発信する時間軸をコンセプトにしている。(古池)
      ・賑わい作りをコンセプトにして、人と人が交流し、平和を発信できる機会を作ることを提案。(堀)
      ・平和を作ることをコンセプトに祈りも憩いも賑わいも求めている。(高橋)
      ・平和公園が祈りの場に対して、中央公園は活動の場であるべき。(石原)
      ・真に平和を追求する町作りにより、賑わいが生まれ、市民が生活できる。平和で飯が食えるようにする。(平岡)

  • エリアの特性
    • 丹下軸線
    • (質問)被爆100年の計画においても丹下軸線を尊重すべきか?
      (回答)5名が○(尊重すべき)、1名が△(どちらでもない)
      (反対意見)・丹下さんの時点と今とでは状況が異なるので、囚われすぎない方がよい。(石原)

    • 基町アパート
    • (質問)被爆100年という長期的な視点に立って、基町アパートを保存活用すべきか?
      (回答)4名が○(活用すべき)、1名が×(壊すべき)、1名が△(どちらでもない)
      (反対意見)・活用できる期間は活用するが、将来的には壊す。(石原)
      ・広島の一等地にあり、アパートがここにある必然性はない。(堀)

    • 旧市民球場跡地
    • (質問)旧市民球場を積極的に保存活用すべきか?
      (回答)3名が○(活用すべき)、3名が×(壊すべき)
      (反対意見)・新市民球場ができたのだから、別の形で記憶だけは残して、本体は壊してもよい。(高橋・石原)
      ・カープそのものが復興の象徴であり、球場はカープが育つ過程にすぎないので壊してもよい。(堀)

    • 公共施設
    • (質問)既存の公共施設をどう考えるか?公共施設の重要性については共通認識なので、質問はしない。

    • 平和公園と中央公園のつながり、道路の分断
    • (質問)中央公園から平和公園への人のアクセスをもっと考えるべきか?
      (回答)全員が○(当然考えるべき)

    • 川・水
    • 質問)水の都広島として川・水を積極的に中央公園に取り入れるべきか?
      (回答)全員が○(取り入れるべき)

    • 審査員の感想ーー石丸氏
    • ・いくつかの計画の評価軸に分解して、○×△で評価するのは計画のおもしろさが欠けてしまう恐れがある。全体の物語の視点から評価することも必要である。

  • 提案作品のコンセプト
    • 堀弘明氏
    • ・すべては人と人が交流し、平和を発信できる機会を作る「賑わい」のためというコンセプト。
      ・慰霊碑から原爆ドームの軸線上に平和都市の象徴としてピースリングを配置。広島の負のイメージを払拭するため観光の名所になりうるインパクトのあるデザイン。

    • 古池周文氏
    • ・被爆・復興から未来へ発信していく一連の流れを広島の役割と考え、未来につなげていくための仕組みを中央公園に点在させ、人々が集い、平和を発信していくことを提案。
      ・「歴史と川の道」と称して、広島の歴史と川を活かした町づくりを提案。

    • 石原滋氏
    • ・核廃絶・世界平和を推進する本拠地として、世界平和を実現するための機関を設置しようという提案。
      ・川に沿って建つ原爆ドームと同じ風景を作って、産業奨励館を復元した結果として、川を掘り島ができ、そこに国際機関を集中的に配置。

    • 高橋志保彦氏
    • ・テーマは「大らかな風景〜森と丘をつくる〜」とし、コンセプトは「平和を作る」。
      ・丘を作って、場所を知り、人を知り、文化を知るコミュニケーションの場とする。
      ・森は人間の思考のために大事であり、憩い・安らぎの場。
      ・平和公園と中央公園を一体的に結び、周辺エリアを含めたコンパクトシティとして、市民が楽しく廻れるペデストリアン・サーキュレーションを提案。

    • 大上泰弘氏
    • ・平和公園は続くとしても、人間には寿命があり、世代間で更新していくことが重要。
      ・基町アパートは歴史的価値を評価して残すが、若者が利用できるように用途変更する。
      ・公共が主導するのではなく、市民が自由に触れ合う場、交流の場が必要。

    • 田中雄其氏
    • ・施設がバラバラに存在している現状を解消するために、ひとつながりの道に沿って施設を配置。
      ・広島市民と観光客が一体となった賑わいから平和を発信することを提案。

  • 特別審査員の見解
    • 平岡敬氏
    • ・広島平和都市法の目指す都市像を念頭に置いて中央公園を考える。
      ・ただ憩うだけではなく、生きる喜びが実感できる場、平和を実現するための活動の場にして、平和で飯が食えるようにする。
      ・中央公園の将来の姿は、これしかないということではなく、変わってもよい。
      ・市民の意識が町を作っていくので、市民の意識を高めていくために今回の試みが一助になればいい。

    • 石丸紀興氏
    • ・計画を提案することは、自分が歴史に参加したという思いを醸成することが今回のコンペで分かった。
      ・中央公園と平和公園のつなぎ方、水辺の使い方、軸線の扱い方等、今回のコンペは多くのストックを得た。
      ・広島の平和復興の物語から言えば、平和都市法の果たした役割は大きく、物語を完結させないで、もっと作っていく必要がある。都市づくりに結実していき、今生きている人達が歴史に関わる必要がある。

    • ナスリーン・アジミ氏
    • ・広島は「祈りの場」、「平和発信の地」、「賑わいの場」等、すべての要素がそろっている。小さなことを変えるだけで、中央公園と平和公園をつなぎ、一体感を更に高めることができる。
      ・中央公園も球場跡地もこれから姿を変えることにより、全体的なまとまりを作ることができる。
      ・平和に貢献できる建築、市民のための建築、建築の持つ力を過小評価してはいけない。広島は戦後、すばらしい建築家とビジョンを持った政治家のお陰で都市の発展を遂げてきた。
      ・広島は世界の象徴的存在であることを広島市民は今一度思い起こし、そのために参加してもらいたい。

  • 事務局のまとめーー前岡氏
  • ・広島は被爆という唯一無二の体験をし、市民の総意により平和都市法を成立させ、復興にとりかかった。
    ・広島は日本中、世界中から復興のための応援を受け、その恩を返す時期が来ている。
    ・誰に返すか、どうやって返すかが課題である。祈りの場、平和発信、賑わい等のコンセプトがあるが、それらのデザインは変化してもよい。
    ・ただ忘れてはならないのは、多くの人から応援をいただき、平和を表現する町を広島は持てたことである。
    ・それ故に、これから平和の町を作る人や平和を表現する人には、是非広島に来てもらって、平和を表現する町を知ってもらう仕組みが中央公園の将来の姿にあるべきではないか。

雑感

一連のイベントが終わり、しばらくはクールダウンをしていました。とはいえ、討論会のテープ起しをしたり、報告書作成の準備をしたり、ゆっくり休む暇はありません。
討論会の原稿を読み返しながら、今回の報告をまとめています。審査員の皆さんの見識も高いし、入賞された皆さんも自分の考えをしっかり持っておられて、意義深い内容となっています。

10月24日には市の方でも旧市民球場跡地委員会を開き、各グループの代表から様々なアイデアが出されたようです。「若者が集う賑わいの場」にしたいという基本方針のようですが、5・6年前に通った道をまた繰り返しているような気がします。
私たちはこれから報告書を作成しますが、そのエキスをまとめて小冊子にする予定です。提案作品の分析と公開討論会の内容を踏まえて、実行委員会としての意見を公表したいと思います。

『被爆100年広島市中央公園アイデアコンペ』のホームページは、 こちらをご覧ください。

  (2011.11.15 記載)
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