球場跡地「発言/交差点」投稿

中国新聞の「発言/交差点」欄で球場跡地活用について読者の意見募集があったので投稿しました。
結果、9月29日の新聞に掲載されました。記録として残すと共に掲載された意見23件を私なりに分析したいと思います。

投稿文「旧広島市民球場跡地について」

戦後間もなくこのエリアは公園用地となり、市民広場を囲むように児童文化会館、児童図書館、中央公民館等の施設が建設されていた。
市民広場では昭和22年から24年まで広島平和祭が開催され、8月6日には式典が行われていた。旧市民球場は市民広場をつぶして建てられたのだ。
球場跡地は平和公園と中央公園、紙屋町の繁華街をつなぐ大事な結節点である。そこに大きな建物を置いて各エリアを分断させる愚だけは慎んでもらいたい。
球場跡地に立てば原爆ドームが望めて、平和の喜びを感じられる環境が必要だ。球場跡地はもう一度市民広場に戻し、西洋のプラザのような賑わいのある多目的な広場が望ましいと思う。

掲載文

掲載記事1 掲載記事2









投稿文と掲載文の比較

・文字数が4割カットされているので、自分の言いたいことも100%は伝わらないが、メインの主張だけは表現されている。
・無駄な字句をそぎ落として、エキスだけを抽出する技はさすが新聞記者である。
・ハコモノを全面否定しているのではなく、このエリアを分断させる大きな建物を否定している。
・多目的広場は西洋風のプラザを想定しているので、建物に囲まれた広場である。その建物の用途が課題であるが、ここでは触れていない。

投稿意見の分析

上空写真
広島中央公園上空写真
(市の報告書より)
・新聞社に投稿された意見は沢山あると思うが、その内掲載されたのは23件である。
・市の検討委員会では、跡地の機能として「文化芸術」、「緑地広場」、「スポーツ複合型」の3つに絞っているが、投稿では幅広い意見が出されている。
・ここでは機能別ではなく、具体的な建物か?建物ではなく広場等のオープンスペースか?それ以外かの3つに整理する。
・集計すると、建物案13件、オープンスペース案7件、その他8件(ダブりあり)である。
  • 建物案
  • ・サッカースタジアム(3件)、産業奨励館復元(3件)、文化・芸術発信(2件)、バスセンター(1件)、大型物産店(1件)、ひろしま夢プラザ移転(1件)、原爆文学館(1件)、平和賞受賞者記念館(1件)
    ・サッカースタジアムは「市内に専用スタジアム建設」の運動が高まっているので、その賛同者の意見を反映したものと思う。
    ・産業奨励館の復元も以前から要望が高かったようで、昨年のアイデアコンペでも数件あった。原爆ドームと対比する形で平和をアピールでき、観光名所になりうる素材である。
    ・原爆文学館と平和賞受賞者記念館は広島ならではの平和発信に重きを置いている。文化・芸術発信(2件)も広島らしさを前提にしているので、同類といえる。
    ・大型物産店とひろしま夢プラザは産業振興の面からの提案である。バスセンターも交通拠点の利便性を高めるための懸案事項である。
    この地でなければ、価値がないか否かを判断基準とすると産業奨励館の復元が第1位ではないかと思う。

  • オープンスペース案
  • ・野外コンサートや祭り等、イベントを主体とした広場(3件)、子供の遊びや憩いを主体とした広場(2件)、静かな祈りと散策の場、鎮魂の森といった平和を意識した静寂な空間(2件)
    ・イベント広場は、地面が石畳のような硬い感触の西洋風な広場をイメージする。
    ・憩いの広場は、芝生面のような、そこに座ったり、寝転んだりできそう。
    ・祈り・散策となると木立の茂った自然の中に佇んでいる雰囲気がする。
    都会の中心で、平和公園と中央公園をつなぐ接点としてどれが適しているだろうか?
    中央公園の北側エリア(芝生広場)が森のような自然公園になれば、?はつなぎ役ではなく同化してしまう。
    中央公園の南側エリアは体育館や図書館等の公共施設が散在しており、これらを適正再配置するとすれば、?と?が当てはまる。
    私としては、建物をうまく再配置し、電車通り側は原爆ドームが望めるように開放され、他の3方を建物群で囲まれた広場がよいのではないかと思う。       

  • その他
  • ・一度に決めずに、今あるものを上手に使いこなし、市民の手で足りないものを作っていく(4件を集約)、管理費発生のハコモノは不要(1件)、中央公園の芝生広場にサッカースタジアム(1件)、広島城へのアプローチ(1件)、地下空間利用(1件)
    まずは今あるものを上手に使いこなし、時間をかけて市民が議論をしながら決めていこうという意見には共感する。
    まちづくりは行政が主体ではなく、市民が主体であり、行政は脇役だと思う。

雑感

掲載意見は紙面の制約で、球場跡地の活用策に絞られています。そのため提案の前提となる考え方(コンセプト)が読み取れないケースが多い。個々の建物をあげるより、このエリアをどのような場所にしたいので、そのためにはこのような建物をこのように整備すればいいのではないかというプレゼンが大事ではないかと思います。

球場跡地には、その土地が持つ霊気(パワー)があります。それは平和発信ではないでしょうか。原爆ドームに対峙していれば、何が建っても平和を発信し続けます。
旧市民球場が復興のシンボルとして市民に親しまれたのも、あの地に市民の希望として建設されたからだと思います。
球場跡地のパワーを最大限生かす活用策を導き出せば、今以上に世界から人を呼び集めることができるのではないかと期待しています。

今回いろいろな意見が掲載されましたが、これらをどう反映させられるのか面映ゆいところです。中国新聞はこの時期に何の目的で読者から意見を募ったのでしょう?提案された意見をどのように取りまとめるつもりでしょう?単に意見を聞きっぱなしにしたのでは、世論を喚起し、良識のある方向性を提言する新聞社としての役割を放棄することになります。

市で検討されている委員会は3つのタイプに機能を集約しましたが、一つの方向性に絞り込むときに誰がどのように英断を下すのでしょう?形式的には市長ですが、市民が納得できる理念とビジョンを示すことができるか否かが問われます。中国新聞もせっかく読者から意見を募ったのだから、中国新聞としての良識を表明して欲しいと思います。   

*ちょっとコーヒーブレイク : 『平和記念都市ひろしま

  (2012.11.1 記載)   
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