アイデアコンペの審査方法

上空写真
中央公園上空写真
(市の報告書より)

3月から実行委員会の事務局を設置し、具体的な準備を進めるところまでやってきました。
今回のアイデアコンペの一番の特徴は、協賛していただいた市民の皆さんに審査をしてもらうことです。それに対して無謀だという意見をいただくことが多々ありました。
私も半分は肯定しますが、半分は市民でも審査できるようなコンペにすればよいのではないかと反発しています。ここでは、それが可能となるような審査方法について検討したいと思います。

審査の概要

  • 応募作品の公表
  • 審査してもらうために応募された作品を公表します。誰でも自由に検索できるように実行委員会のHPに公開します。
    また、より詳細に作品を比較検討したい人のために、人目に付きやすい場所を選んで展示します。

  • 第1次審査
  • 審査資格者はあらかじめ決められた審査の項目と着眼点に沿って評価し、優秀と思えるものを3点選んで投票します。
    投票結果に基づいて、第2次提案に進める上位5者を選定します。

  • 公開プレゼンテーション
  • 第2次提案者は公開プレゼン用に提案内容を整理・補強し、市民の前で説明します。市民との質疑応答を通じて、審査の判断材料を審査資格者に提供します。

  • 第2次審査
  • 公開プレゼンに参加できない審査資格者はHPに公開された第2次提案書等を評価して最優秀と思える1点を選んで事前に投票します。
    公開プレゼンに参加した審査資格者は第2次提案者の説明及び質疑応答を吟味して、その場で投票します。事前投票と会場投票を半々のウエイト付けで集計し、最優秀賞1点と優秀賞3点を決定します。

審査基準

  • 評価の項目
  • ○コンセプト
    ・このアイデアコンペで求めているのは、広島平和記念都市建設法の精神を具現化することである。
    ・平和公園につながる中央公園のあるべき姿を、広島の地理的・歴史的・文化的な位置付けの中でどのように描き、具体化に向けてどのように考えているか。
    ・被爆100年、35年後の姿をどう捉え、残すべきものと変化すべきものを的確に捉えているか。
    ・現実の制約条件等に捉われることなく、自由な発想が求められているが、妥当性・実現性はあるか。
    ○全体のゾーニング
    ・平和公園とのつながり、近隣商業施設との関係、北側の住居地域との関係等、周辺環境との調和がとれているか。
    ・エリア内の道路等により分断されているが、一体感のあるエリアとして提案されているか。
    ○配置図
    ・各ゾーンにおける施設及び外部空間が適正に配置されているか。
    ・各ゾーンのつながりは適正に保たれているか。
    ○空間のイメージ図
    ・最もアピールしたい空間について視覚的に表現できているか。
    ・その内容はコンセプトと合致しているか。
    ・広島平和記念都市建設法の精神を具現化したものになっているか。

  • 審査の着眼点
  • 今回のメインテーマは広島平和記念都市建設法の精神の具現化である。恒久の平和を誠実に実現しようとする理想の都市を掲げ、恒久の平和を記念すべき施設その他平和記念都市としてふさわしい文化的施設を建設することを目指している。
    平和記念都市の文化的施設が備えるべき条件を以下の4原則とし、審査の着眼点として評価する。
    ○市民への開放度
    ・一般市民に開放され、誰でも自由に利用できる度合いを評価する。
    ○くつろげ度
    ・市民に開放されていても、気軽にくつろげる場がなければ価値が半減する。誰でも利用できる空間の中でくつろげる度合いを評価する。
    ○文化的な香り度
    ・施設空間の内外部において醸し出す文化的な香りを備えていて欲しい。広島らしい文化の香りの度合いを評価する。
    ○愛と平和のメッセージ度
    ・広島の宿命ともいうべき「愛と平和」に対して、提案に込められたメッセージの度合いを評価する。

  • 応募作品の公表
  • ○HPによる公開
    ・応募された作品はインターネット上に公開し、いつでも誰でも閲覧できるようにする。
    ・審査資格者はHPに公開された応募作品を比較・検討の上、優劣を評価する。
    ・審査資格者が評価する上で参考になる比較検討一覧表を事務局が用意し、公開する。
    ○会場展示
    ・HP上の公開だけではIT弱者にとって不公平感があるので、人目に付きやすい場所での展示も行う。
    ・より掘り下げた検討を行うためにも、HP公開より会場展示の方が優れている場合がある。
    ・HP公開と会場展示にはどちらもメリット・デメリットがあり、並行して同時に公表する。

  • 第1次審査
  • ○審査資格者による投票
    ・応募作品を審査の項目及び着眼点に沿って評価し、優秀と思われる3点を選び、第1次投票用はがきで事務局へ郵送する。
    ○集計
    ・無効投票の扱いを処理する。投票結果を集計し、第2次審査に進める上位5者を選定する。

  • 第2次審査
  • ○第2次提案書の公表
    ・5者の第2次提案書をHPに公開及び会場に展示する。
    ○審査資格者による事前投票
    ・公開プレゼンに参加できない審査資格者は、第2次審査に進んだ5者の第1次提案書及び第2次提案書の内容を吟味し、最優秀と思われる1点を第2次投票用はがきで事務局へ郵送する。
    ○公開プレゼンテーション
    ・第2次審査に進んだ5者は第1次提案書及び第2次提案書を用いて説明を行い、会場からの質問に答える。
    ○審査資格者による会場投票
    ・公開プレゼンに参加した審査資格者は、5者の説明及び質疑応答を吟味し、最優秀と思われる1点を選び、その場で第2次投票用はがきを投票する。
    ○集計
    ・事前投票と会場投票の結果をそれぞれ比率(%)で計算し、合計した比率の高い順に最優秀賞1点、優秀賞3点を決定する。

第1次審査のケース・スタディ

応募が50作品あり、審査資格者が1000人と仮定し、審査投票は資格者の立場で、結果集計は事務局の立場でスタディしてみることにします。

投票はがき
  • 第1次審査投票
  • ・HPに公開された応募作品50点を通しで見て、めぼしいと思われる10点を絞り込む。
    ・絞り込んだ10点については熟読し、事務局でまとめた比較検討一覧表を参考にしながら5点に絞り込む。
    ・時間にゆとりがあれば、展示会場に足を運び、全作品に目を通し、見落としがないか確認する。
    ・5点については審査の着眼点に沿った評価を行い、上位3点(作品番号3、28,43)を選定する。
    ・第1次投票用はがきに記入して事務局へ郵送する。

  • 集計結果
  • ・投票の中には曖昧な内容や不正ではないかと疑われるものが出てくる。有効とするか無効とするか、アドバイザーの意見を聞きながら事務局で処理する。
    ・有効投票の集計は事務的に行う。
    ・集計の結果、上位5点(作品番号8、13、28、35、42)を選定する。

第2次審査のケース・スタディ

第2次審査に進んだ5者の第1次提案書及び第2次提案書をHPに公開し、公開プレゼンテーション会場に展示します。

  • 第2次事前投票
  • ・第1次審査投票と同様に審査の着眼点に沿った評価を行い、最優秀と思われる1点を選定する。
    ・第2次投票用はがきに記入して事務局へ郵送する。

  • 公開プレゼンテーション
  • ・公開プレゼンテーションの内容・運営等については、別途検討する。

  • 第2次会場投票
  • ・5者の説明及び質疑応答を吟味し、最優秀と思われる1点を第2次投票用はがきに記入し、投票する。

    投票結果
  • 集計結果
  • ○事前投票集計
    ・投票の有効・無効の事前整理の上、集計し、5作品の各投票比率(%)を計算する。
    ○会場投票集計
    ・投票の有効・無効の事前整理の上、集計し、5作品の各投票比率(%)を計算する。
    ○事前投票と会場投票の各比率を合計し、高い順に最優秀賞1点(作品番号13)、優秀賞3点(作品番号8,35,42)を決定する。

雑感

私も審査を一般の市民に委ねるのはリスクが大きいと考えています。人気投票になる恐れがあるし、提案内容の良し悪しではなく応援団の多い者が勝ち残ることも想定されます。 悪くすれば、応募者が協賛金で審査資格者を抱きこむことさえあり得ます。応募者と審査資格者にはモラルを訴える文言を公募要綱等の中に明記する必要がありそうです。

最悪のシナリオは、誰が見てもレベルが低いと思われる作品が残ることです。それを防ぐためには、事務局が明らかに低レベルのもの、条件を満たしていないものを事前にふるいにかけておく必要がありそうです。事務局の恣意が入り込まないように、その過程をオープンにすることが前提です。

これまで実施されたことのない型破りのアイデアコンペですから、応募者も協賛者も少なく、低調に終わることも覚悟の上です。もし市民の間で少しでも議論が沸き上がり、広島平和記念都市建設法の精神を蘇らすことができれば、大成功です。今回のアイデアコンペが平和記念都市ひろしまの将来の姿を考える起爆剤となることを願ってやみません。

*ちょっとコーヒーブレイク : 『広島を愛する人

  (2011.3.1 記載)
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