- 企画 まず資金調達の可能性を探るために予算額の大枠を掴まなければなりません。土地の評価額、類似施設のコスト情報等を参考に建物を取得するための所要金額を算出し、費用対効果等の事業性の可否を検討します。そのためのツールとしては、土地及び建物のコスト情報、建物概算コスト手法、VFM(バリュー・フォー・マネー)等を利用します。
- 設計者の選定 民間の場合、馴染みの設計事務所があれば、そこに特命で依頼するのが普通です。設計事務所の実績等を調査して2・3社を指名し、見積りを徴収し、ヒアリングして1社に特定する方法もあります。
- 設計 発注者から示される設計の与条件・基本構想に基づいて、設計者は順次、基本計画・基本設計・実施設計をまとめていきます。
- 施工者の選定 施工者選定も設計者選定と基本的に同様です。民間発注の場合は、馴染みのゼネコンがあれば、特命のこともありますが、一般的には数社を指名して競争入札により施工者を決めます。
- 施工 施工は発注者と請負契約をする元請(ゼネコン)とその下請業者等が協力して行います。
- 完成検査・引渡し 施工者から完成報告を受けて、発注者が完成検査を行います。検査に合格すると、施工者から発注者に引渡され、建物の所有権が発注者に移ります。
- 維持保全 建物の引渡しを受けた後は、発注者側の責任において建物の適正な管理運営をしなければなりません。
土地を絞込み、必要な施設の性能・機能を整理して、建物の規模・構造を設定します。そのためには土地選定手法、面積算定手法等を用います。
敷地の立地条件、建物用途、諸室の所要面積、予算額等が設計の与条件となります。
公共発注の場合は、透明性・公平性・競争性等、説明責任が問われるので、公募型プロポーザル方式等の採用が普及しつつあります。広く参加希望者を募り、客観的に組織の技術力、提案内容等を総合評価して設計者を特定します。
官民を問わず、設計事務所の規模・陣容・得意分野・設計実績等のデータベースが必要とされます。
設計の各段階で建築コストを算出し、設計内容と建築コストについて発注者の了解を得ながら作業を進めます。
設計段階では、用途別の建築設計資料集、標準詳細図、標準仕様書等を参考に設計図書を作成します。建築コストは、建築数量積算基準、建設物価版、見積り書式等の積算資料を用いて算出します。
なお、設計のある段階でデザイン・レビューを行い、代替案との機能・コスト分析により、設計価値の最大化を目指す設計VE(バリュー・エンジニアリング)が導入されています。
公共発注の場合は、以前は指名競争入札が主流でしたが、最近は一般競争入札が広まっています。一般競争入札は談合抑制の効果がある反面、ダンピング(低入札)が多発し、品質低下を招く恐れがあります。そこで、入札金額だけで決めるのではなく、金額と技術力等を加味した総合評価方式による選定に移行しつつあります。
公共の場合は、施工業者の規模等のランク付けをするため、工事業種ごとに工事等請負有資格者登録名簿を作成しています。
元請は主に仕事の段取りと総合調整を担い、下請業者と協力業者等を束ねて、安全管理・品質管理・工程管理・コスト管理を全うしていかなければなりません。
元請が段取りした環境の中で、実際に現場で施工するのは下請業者等です。施工中は施工者の自主施工管理を前提に、各施工の節目毎に発注者サイドの検査を受けながら工程を進めていきます。
現場での安全管理・品質管理・工程管理・コスト管理等のために各種のツールがありますが、現場が一つの組織として有機的に機能するためには、全社的な品質管理TQC(トータル・クオリティ・コントロール)を推進させることが求められます。
ツールとしては、工事検査要領、設備等の総合試運転調整要領、完成建物引渡し書等、発注者側・施工者側の各種のマニュアルがあります。
施工者は建物の維持管理のための手引書を作成し、発注者側の施設担当者に維持管理のノウハウを伝達します。
建物を健全に維持していくためには定期的な点検と修繕が欠かせません。特に設備機器には耐用年数があり、故障する前に整備・交換等の処置が必要となります。
部分的な修繕で負えなくなれば、大規模な改修や改築を行うことになります。
ツールとしては、施設の点検・診断要領、修繕措置判定手法、施設カルテ(履歴)等がありますが、施設を企業の経営戦略として有効利用の最適化を目指すFM(ファシリティ・マネジメント)が注目されています。