ストーリー
まず最初に、アイデアコンペをやる気になった動機とどんな風にスタートしたのか。実行委員会の立上げ等。
次に、どんな風にアイデアコンペを実施したのか。公募要綱の作成、募集の仕方、提案作品の投票及び審査、表彰等の裏話。
最後に、アイデアコンペ実施後における公開討論会、報告書作成等の話、問題点と今後の課題等を整理したいと思います。
内容の骨子(案)
- アイデアコンペのきっかけは? ・宮仕えを終え、広島に戻り、主夫業に専念していたが、妻も退職し、自由な時間が生まれたこと。
- アイデアコンペのテーマは? ・当初は、旧市民球場跡地利用のアイデアコンペを考えたが、市に対して当て付けがましいし、火に油を注ぐことになりそうなので、思いとどまる。
- 実行委員会を結成 ・相棒とは大学の同期でバレー部の同じ釜の飯を食った間柄だから、卒業後別々の道を歩んでいても、時々会ったときには互いの夢等についてよく語り合っていた。
- マスコミ対応 ・マスコミとの対応は慣れていないので、当初は躊躇していたが、まずは広島市の市政記者クラブに報道資料を投込むことから始める。
- 提案参加者の募集 ・マスコミに情報提供すると同時に、PR用のチラシを関係団体等に配布し、周知を図る。
- 投票参加者の募集 ・投票の呼び掛けが一番苦戦した。見知らぬ人に話をしても相手にされないので、身近なところから広げていくことにする。同情して協賛をしてくれるが、その先にはなかなか広がらない。
- 特別審査委員会 ・市民の投票により賞を決める際に、その投票結果が正しいか否かの審査が必要となる。また、投票で選ばれなかった中から光る作品に特別賞を表彰することにしたので、その選定をお願いする必要があり、特別審査委員を選ぶことにする。
- 広島市への対応 ・アイデアコンペの準備段階で2011年2月に広島市へ事前相談に行く。趣旨を説明し、後援名義をいただければと思ったが、叶わなかった。
- 作品展示会 ・第1次提案作品が出揃って、投票に入る間に作品を公表しなければならない。HP上での公表だけでは一般市民へのインパクトが弱いので、作品展示会を催すことにする。会場の選定には紆余曲折があり、苦労する。
- 公開プレゼンテーション ・事前に司会者、タイムキーパー、パソコン担当、カメラマン、会場設営、展示パネル設営、受付等の役割を決める。
- 投票結果 ・第1次投票は優秀と思われる3点を選んで投票するが、72作品から3点選ぶのも大変な作業である。特に、HP上で審査するのは至難の技である。最後まで読み通せなくて途中で棄権した方も多いであろう。
- 公開討論会 ・受賞者7名のうち6名に参加してもらえたのが、良かった。旅費等は事務局負担にしたので、支出は増えたが、討論の内容は濃いものになった。
- 報告書 ・討論会会場の音の反響が大きいのと街宣車の騒音等により聞き取りにくかったため、討論会のテープ起しに手間取る。討論会のエキスを要約して報告書の本文に掲載する。
・宮仕え時代のノーハウを活かし、広島の公共的建築を通して広島の街を良くしたいとずっと考えていた。
・旧広島球場跡地利用の動きに関心を持ち、自分なりの案も考えていたが、広島市の対応のまずさに憤りを感じ、全く新たな別のアプローチを試みることを決断した。
・あまり目先のことに囚われず、長い目で冷静に、しかも対象エリアを広げて考えることにする。ちょうどその頃、国際建築家連合(UIA)の東京大会広島イベントの企画「被爆100周年の都市広島を考える」に出会い、我々の企画とぴたりと一致する。UIAの広島イベントはなぜか流れてしまう。
・広島市のへそに位置する広島市中央公園エリアを対象に設定し、被爆100年のあるべき姿のアイデアを求め、「広島平和記念都市建設法」に謳われている「恒久の平和を誠実に実現しようとする理想の象徴として、広島市を平和記念都市として建設する」という都市づくりの理念を具現化することを目指す。
・実行委員会を結成する前の年にも広島市の某プロジェクトの公募型プロポーザルに共同で参加し、そのときにもう一人の大学同期にも声をかけ3人がそろった。
・いよいよアイデアコンペを準備する段階で、大学に教授として残っているもう一人の同期に声をかけ、自由な立場で協力してもらうことにした。4人が核となって2011年3月1日に実行委員会を結成する。
・相棒と私の二人は本気でやる気だったが、残る二人は半信半疑であったと思う。協力を求められたから、できる範囲内で応援してやるか。しかし、彼らが加わっていなければ、行き詰っていたのでは?
・提供した資料を読んで、興味を持ってくれた者から電話の問合せがある。翌日に掲載されることもあるが、しばらく置いてからのものもあるし、没にされることもある。
・こちらとしては取材を受けて、正確な情報を記事にしてもらいたいが、特ダネ以外は記者の方にそんな時間的な余裕はなさそうだ。
・多くの試行錯誤を繰り返しながら、少しはマスコミ対応のツボが会得できたような気がする。
チラシ(投票者用)
・建築のコンペ情報関係のメルマガに掲載したり、建築系大学の先生等に学生の参加要請のメールをする。また、友人・知人等を通して普及を図る。
・協賛金の1.000円と振込手続きがネックである。手続きの代行を認めたり、協賛金の後払いを認めたり、大幅な緩和策をとったが、効果は少なかった。
・協賛金をなくして、誰でも投票できるようにしても、投票者はそんなに増えないかもしれない。現に、協賛金を払った人でも投票しなかった人が多くいる。要は、協賛金を払ってでも投票したいという熱意のある人をどれだけ多く集めるかだ。
・特別審査委員の選定も審査委員長と男性二人の委員はすんなり決まったが、残りの女性枠1名がなかなか決まらなかった。最終的にユニタールの前所長に決まったが、建築にも造詣が深く、示唆に富む意見を沢山いただき、適任であった。
・審査委員長も元市長であり、平和行政を直接指揮した体験を踏まえた発言には重みがある。今回の審査委員のメンバー構成はバランスの取れた組み合わせではなかったかと思う。
・趣旨はよく理解していただいたが、実現できるかどうかわからないものに後援名義を出すわけにはいかない。実績のない無名の実行委員会が主催するアイデアコンペに対しては懐疑的であったか。ただ、都市公園法の制約をつけないのであれば、自由な発想の提案を求めた方が良いのではないかというアドバイスをいただく。
・4月に市長選があり、松井新市長が誕生する。旧広島市民球場跡地利用も見直すことになり、若者の集う賑わいの場にする方針が出される。6月には、市の方もアイデアコンペの結果をその方向でまとめてもらえば、参考にしたいという旨の文書をいただく。
・アイデアコンペの公開プレゼンテーションと公開討論会の聴講に市の担当者も参加し、内容を確認する。12月に成果をまとめた報告書を広島市に提出し、約30分間概要を説明する。
・報告書をどう料理するかは広島市の領域であり、暖かく見守ることにする。
旧日銀の作品展示会
・第1回目は7月に広島市まちづくり市民交流プラザの玄関ホール脇の展示コーナーで3日間展示する。狭い中に全72作品を展示しなければならないので、4段の配置となる。下の段の作品は見過ごされる可能性が大である。
・第2回目は9月の公開プレゼンテーション開催日に、県立美術館講堂前のホールに展示する。上位5作品のプレゼンテーションの後、第2次投票があるので、5作品を中心に展示する。
・第3回目はアイデアコンペが終了後、総括として10月に旧日銀の多目的スペースで4日間展示する。スペースが広いのでゆったりと配置できる。他の団体の企画の一環で共催したので、設営も共同で作業する。
公開プレゼン
・前日に3回目の特別審査員会が開かれ、特別賞が決定する。女性の審査委員は今回が始めての出席で、外国人であることもあり、事務局としてはすんなり納まるか気が気ではなかった。表彰状も事前に作成することができひと安心。
・当日は午前中に会場設営を終え、午後プレゼンテーターによるパソコン操作の予行演習を行い、2時からの開演を待つ。聴講者が何人集まるか、仲間内で100人集まるか否かの賭けをする。結果は?
・プレゼンテーション、質疑応答、会場投票、集計結果発表、表彰式、審査講評等はスムースに運ぶ。
会場投票
・結果として、前半の作品に票が集まる傾向が出ている。レベルの高い作品が多いためか、票が幅広くばらついている。どこで線を引くか迷うところであるが、第1次審査は割り切って得票数の多い上位5作品を選定する。
・第2次投票は上位5作品の中から1点を選んで投票する。公開プレゼンに出席できない人は事前に投票し、出席できる人はプレゼンを聞いた後、会場で投票する。両者の得票数を集計して、上位から順に最優秀、優秀、佳作を決定する。
・得票数が多いから優秀かといえば、必ずしもそうとは言えない。仲間にお願いして投票してもらえば、数は増える。予想をしていたことではあるが、今回もその兆候が現われた。今後の検討課題である。
公開討論会
・事前にシナリオ案を送付して、準備してもらったが、流石に受賞者はしっかりした意見を持っている。審査委員も高い見識を披露してもらい、活発な議論が展開され、中央公園のあるべき姿(ビジョン)の方向性が示されたと思う。
・提案作品をどのように整理し、分析するか迷ったが、討論会のシナリオに順じて、コンセプト(機能)別と地域特性別に整理・分析することにする。提案作品の分析と討論会の議論をベースに実行委員会としての意見を集約する。
・12月19日に広島市の公園整備課長と旧広島市民球場跡地担当課長に報告書を提出する。個々の提案内容をアピールすることには関心がなく、市民参加型のアイデアコンペの手法について示唆することが一番の狙いである。また、市民に対しては主体的に町づくりに関わってもらう切っ掛けになればよいと思う。
雑感
一つのことをやり終えて次のステップまで時間がかかることがあります。同じ事を繰り返しても進歩はないし、特に反省すべき点が多い場合は、次に備えて構想を練り直し、熟成させなければいけません。
今回のアイデアコンペも私にとっては一つのドラマでした。うまくいったこと、いかなかったこと、うれしかったこと、腹立たしかったこと、悲喜こもごもの出来事が詰まっています。
アイデアコンペの成果をまとめた報告書は公式な記録ですが、これからまとめようとするメイキングは表に出せなかったものからおもしろそうなエピソードや参考になりそうな話などをピックアップすることにしています。
宝石は表面的な現象の中より、埋もれている日陰の中からよく見つかるといいます。メイキングの中に見出せるかもしれません。掘り出し物を楽しみながらアイデアコンペのイベントを振り返ってみたいと思います。
(2012.2.1 記載)