アイデアコンペのメイキング(5)

市民による投票の結果

前回は実行委員会の活動内容等を記述しました。今回は市民による投票及びその結果について問題点等を中心に記述します。 但し、私の目から見たメイキングであることをお断りしておきます。

第5章 市民による投票の結果

  • 投票参加資格及び投票方法
  • ちらし2記事
    チラシ(投票者用)
    ・市民と共に考え、市民に参加してもらうコンペを目指していましたが、市民なら誰でもよいというわけではありません。それなりに意識を持った人に参加してもらいたく、投票参加資格として個人協賛金1000円を払っていただくことにしました。
    勿論、コンペの運営費としてお金が必要ということもあります。当初の賞金合計額80万円位が集まれば、いうことはありません。
    ・個人協賛の人はゆうちょ銀行の振替口座に振り込んでいただくことにしましたが、面倒くさいこともあり不評でした。集まった金を私が代理で振込むケースが多発しました。
    同様に、代表者がまとめて振り込むことも可としました。しかし、これが組織票等の要因となります。
    ・協賛金を振り込んでもらい、確認の後、事務局より投票用はがき(第1次用・第2次用)を送付します。
    投票参加資格者は提案作品をHP上又は作品展示会場で審査し、はがきで投票します。第1次投票では優秀と思う作品を3点選んで投票します。第2次投票では第1次審査で残った上位5作品の中から最も優秀と思う作品を1点選んで投票します。
    ・提案作品72点から選ぶのに、HP上では読みづらいし、時間もかかり、多大な労力が必要となります。途中でくたびれ脱落された方も多かったと思いますし、後半の作品は読み飛ばし見栄えだけで評価された方も多いのではないかと推察します。

        
  • 第1次投票結果
  • 投票はがき
    投票はがき
    ・第1次投票までの参加資格者は322名で、有効投票者は185名でした。審査委員会で得票の確認を行うので、前日までに届いたはがきを有効としています。間に合わなかったはがきも14枚あったから、全投票者数は199名です。
    ・作品数が72もあり、しかもレベルの高い作品が多いので、票が割れました。特に3位以下は激戦で、同順位が多発しています。
    ・どこで線を引くか迷うところですが、4位が2者並んでいたので、数字で割り切り、上位5者が決まりました。1票差で6位、7位と続いていましたが、この1票の差にどれほどの意味があるのか考えさせられます。
    ・提案者が身内等に投票を依頼するのは、ある程度やむを得ないと思っていましたが、あまりに露骨にやられると興ざめしてしまいます。

  • 第2次投票結果
  • 投票
    会場投票
    ・上位5者には第1次提案のアピールポイントを補強する資料を追加してもらい、公開プレゼンテーションに臨んでもらいます。
    ・その説明と質疑応答を聞いて、会場に来られた投票資格者は第2次投票をします。来場できない方は事前にHP上で審査して、第1次投票と同様にはがきで投票します。
    ・事前投票と公開プレゼン後の会場投票を集計し、上位から順に最優秀賞1点、優秀賞2点、佳作2点を決定します。
    ・第2次投票の参加資格者は401名で、有効投票者は213名でした。公開プレゼン前日までに届いた事前投票は160票、会場投票は53票です。公開プレゼン以降に届いたはがきも10枚あったから、全投票者数は223名です。
    ・事前投票と会場投票では明らかに異なった傾向が見られました。第1次投票で2位だった作品が事前投票で大幅に増やし、会場投票では4位でしたが、合計で2位の倍以上の票を獲得しました。
    ・その結果に不自然さを感じますが、これが投票参加資格を持った市民による投票の結果です。

  • コメント分析
  • ・投票用のはがきにはコメント欄があり、コンペに対する感想や選んだ作品の理由や審査方法に対する意見等が寄せられました。
    ・コンペに対する感想としては、提案内容の豊富さに驚嘆する声やコンペを通して平和や街について考えることができたという好意的な意見が多かったように思います。
    ・審査する上での参考として投票の着眼点を用意しましたが、それに対して、集客力や地域特性等の評価軸が欲しいという意見がありました。評価方法がバラバラではまずいであろうということで、一つの指標として着眼点を設定しましたが、吟味不足の感は否めません。
    ・コメントで多かったのは、HP上では読みにくい、選ぶのに苦労した、投票の期間が短い、等々の苦情でした。反省すべき点が多々あります。

  • 審査方法、投票方法の問題点等
    • 審査方法
    • ・市民の投票により入賞を決めるという画期的な審査方法ですが、公明正大な結果が得られるかというと疑問符が付きます。
      ・クロートが提案した内容をシロートが適正に評価できるかという、そもそも論もあります。しかし、市民が選ぶことを前提にしているので、応募する側もできるだけわかりやすい提案がなされるものと思います。
      ・市民も興味ある身近なテーマなら、理解力は十分に期待できます。今回の中央公園も平和公園の隣地で、旧市民球場跡地を抱えているから、注目度も高かったと思います。よしんば理解が不足気味でも、第6感で選んだものにそんなに大きな狂いは生じないのではないでしょうか。
      ・問題は組織票です。提案の中身より、あの人が提案しているから応援してあげなければという恣意的な投票がなされることです。極論すれば、応募者が票を買って投票をお願いすることもできます。
      ・市民参加と審査の公正さを保つためには、市民投票と審査員による審査を組み合わせる必要性を痛感しました。

    • 第1次投票
    • 作品展示
      作品展示会
      ・前述したとおり、72作品の中から3点選ぶのは至難の作業です。作品の著作権のことを考えて、インターネット上でコピーできないようにしました。
      ・作品展示会場に行けない投票者はHP上で作品を読むしかありません。作品の中には、提案内容を詰め込むために字のサイズが小さい作品が多くありました。
      ・さらに作品をPDFにして掲載しているので、ますます読みにくくなります。これで、よく読んで審査してくださいというのは酷な話だったかもしれません。
      ・文字のサイズを制限する、PDFの鮮度を高める、サムネイルの一覧から作品が開ける、等の工夫が必要です。
      ・各作品の内容のキーワードを整理して、審査の参考資料として用意しようかとも考えましたが、事務局の恣意が入るのも問題なので、止めました。投票者がもう少し簡便に評価できる手立てを考えなければなりません。

    • 第2次投票
    • 公開プレゼン
      公開プレゼン
      ・第2次投票は上位5者から1者を選ぶ作業なので、第1次投票ほどの苦労はなかったように思います。
      ・ただプレゼン会場に行けない方は、HP上の審査なので、読み取りにくさは同じです。第1次投票で投票した作品が残っている場合は、2次でも同じ作品を推された方が多いと思います。残っていない場合に、どの作品に票が流れたかを考察するのはおもしろそうです。
      ・会場に来られた方は、提案者の説明を聞いて投票します。プレゼンテーションの良し悪しで、事前の評価が逆転することも多々あったのではないでしょうか。
      ・今回は会場投票と事前投票を同じ1票としましたが、ウエイトを変えるべきではないかという意見もあります。会場に足を運ぶのは、それだけ興味を持った人であり、的確な判断がなされるだろうと期待ができます。
      ・一方で、これも候補者の応援のため、動員をかけられる可能性が大きくなりそうです。どこか政治の選挙戦に似かよってきます。

    • 改善策
    • ・市民の参加と審査の公平さを保つために、1次審査は市民投票により、2次審査は審査員による審査を検討中です。
      ・逆に、審査員が優秀作品を5者程度選び、その後で市民が投票する方法もありますが、最優秀を人気投票で決めることに少し抵抗感があります。
      ・投票ははがきではなく、メールによる投票を検討しています。投票参加資格もメールによる事前登録のみとします。
      ・投票者の負担をできるだけ軽減し、結果として主催者側の省力化にもつながります。メール投票の本人確認さえクリアできれば、実現可能と思います。
      ・HP上の審査もしやすくする必要があります。前半と後半に作品が掲載されても、ハンディキャップが生じないようにしなければいけません。
      ・投票参加者を増やす方策としては、広島の町づくりに興味を持つ人達のネットワーク作りに励みたいと思います。町は幅広い分野の人達で構成されています。
      ・色々な分野の人達が個人の立場で参加し、ネットワークの一員として輪を広げることにより、参加者の裾野が広がることが期待できます。

雑感

市民投票の意義は、市民が自ら考えて判断を下すことです。市民は色々な考えを持った人の集まりです。個々のケースでは問題を抱えていても、全体を総合すると妥当な線に落ち着いているのが、いわゆる統計的手法です。

統計的手法を成り立たせるためには、母体となる数を大きくする必要があります。市民投票も参加者数を増やさなければ、妥当な結果に導くことができません。参加者を増やすためにどうすればよいかが、大きな課題となります。その点で、前回のアイデアコンペは上手くいったとは言えません。

現在、仲間とその課題に取組んでいます。町づくりに関連する幅広い分野で活躍している人たちが沢山います。その人たちと緩やかなネットワークを組むことはできないか。それぞれがバラバラに頑張っても大きな力には成りえません。大きく束ねる仕組みを編み出せれば、次のステップが切り開けてきそうです。
次回は特別審査委員会について述べる予定です。   

*ちょっとコーヒーブレイク : 『地球を守ろうよ

  (2012.5.10 記載)
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