広島市景観シンポジウム

『平和都市広島の景観のあり方』

シンポ4
シンポジウムのチラシ

広島市の広報メルマガ「ひろしまファンクラブ」を読んで、今回のシンポジウムを知りました。都市計画の第一人者である伊藤滋先生の話も聞いてみたいし、広島の景観に対する松井市長の考え方も知りたいと思い、聴講しました。
6回シリーズの景観シンポジウムが予定されていて、今回は2回目だそうです。1回目のテーマは「平和都市広島の景観形成と都市観光」で、広島市のアジア都市景観賞受賞を記念したシンポジウムでしたが、聞きそびれていました。
平和記念都市として品格のある景観とは何か、私にとっても興味深いテーマです。各パネラーの 意見を紹介すると共に一緒に考えてみたいと思います。

シンポの概要

  • テーマ:平和都市広島の景観のあり方
  • 主催:広島市
  • 日時:2012年10月27日(土)13:00〜15:30
  • 場所:広島市平和記念資料館地下1階メモリアルホール
  • 参加者:約250人(定員300人)

パネリスト等の紹介

    [パネリスト]
  • 伊藤 滋:早稲田大学特命教授
  • 舟引敏明:国土交通省都市局公園緑地・景観課長
  • 松井一實:広島市長
  • [コーディネーター]
  • 保森洋之:広島工業大学環境学部教授

プロローグ

  1. 「美しい都市景観と景観法」:舟引敏明(国土交通省都市局公園緑地・景観課長)
  2. ・建築基準法や都市計画法を遵守していれば、何でも建てられていた町並みの乱れに対する反省により、景観に対する規制の機運が高まっていた。
    ・2004年に景観法が制定されたが、直接的に都市景観を規制するのではなく、自治体等が景観に関する計画や条例を作る際の枠組みである。地方の個性を尊重するためである。
    ・景観(ランドスケープ)は美的価値、文化的価値、緑地価値で高められる。

  3. 「広島市の景観行政について」:西岡誠治(広島市都市整備局長)
  4. ・市の制定した景観条例等に基づき、景観協議を重ね、景観を誘導した事例(看板や建物の色等)を紹介する。

基調講演

  1. 「平和都市広島の美しく品のある景観づくり」〜元気で美しいまちづくり〜:伊藤 滋(早稲田大学特命教授)
  2. ・多くの人が海外に旅行し、外国の美しい景観に触れることにより、我が国の景観が見劣りしていることに気づく。
    ・先進国の一員として、景観を良くすることは国家の品格を保つことにつながる。
    ・外国人観光客の日本の感想は、観光した名所の記憶はあるが、途中の印象が薄い。街全体の魅力を高める必要がある。
    ・生活空間を豊かにすることを目的に景観法が制定され、建蔽率等の規制が緩和される。
    ・景観を良くするための留意点を列記

    • 景観を大事にする地域(歴史地域、現代地域ーー生活・ビジネス・文化等)
    • 遠景より中景、中景より近景を大事にする
    • まわりにある良い建物と庭を見習う
    • 清潔で安全なデザインをする
    • 良いものは時間をかけて恒常的に作る
    • 外構を良くすることを心がける

パネルディスカッション(パネラーの意見要約)

    シンポ1
    パネルディスカッション
        
  1. 都市軸(丹下軸・平和大通り)について
  2. ・廃墟から復興する際の骨格であり、出発点であり、投資を集中させることができた。(松井)
    ・丹下軸は広島独自のものであり、軸線を延長して山にシンボル(例えば、光るもの)を置いてはどうか。(伊藤)
    ・広島の景観は河岸緑地と水面の美しさに特徴があるので、最大限生かすべきである。(伊藤)
    ・軍用地の市への払い下げにより、区画整理や道路の拡幅が進んだ。(舟引)     

  3. 美しい品のある景観とは
  4. ・品は3つの口からできているので、3つ切り口のバランスをとること。自然美・人工美・メンタル(心)、自助・共助・公助、落着き・清らか・もてなし。ルールを守ることがプライドにつながる。(松井)
    ・広島は山があり、川があり、道が広い。市民が誇れる町になると不動産価値も高まる。(舟引)
    ・徹底的に清潔な町にすれば、結果として品のある町になる。例えば、空き地をコミュニティでサッカー場にし、グリーン・キーパーを徹底すれば、周りの資産価値が高くなる。(伊藤)
    ・共存と規範と創造が備われば、品格となる。(森保)     

        
  5. 景観都市戦略について
  6. ・中心市街地と西風新都に比重を置き、水と緑と賑わい作りに力を注いでいる。(松井)
    ・横浜市は緑税(900円/年)を導入し、プライドの持てる町に取組んでいる。有形・無形の文化財の維持保全にも力を注いでいる。(舟引)
    ・高齢者と若者は街中居住を、若い家族は田園居住を勧め、世代間の居住リサイクルを図る。
     また、国際的な都市間競争に生き残るためには、都心部に情報・知的集積が必要であり、超高層ビル等による高度利用を図る。
     被爆前の広島は住居の回りに緑地が豊かであった。復活させるべきではないか。(伊藤)
    ・生活の景観が大事であり、景観法をもっと活用すべきである。(森保)

雑感

伊藤先生の話は分かりやすく、示唆に富む内容が多く含まれていました。街の美しさは生活の身近なところから始めるのがよく、街の中の見苦しいと感じるところをきれいにしていけばよいとアドバイスしています。
確かに収集ゴミが路上に散らばっていたり、歩道に自転車が無秩序に放置されていると気分を害します。一方、窓辺に花が飾られたり、花壇にきれいな花が咲いたりするとほっとします。

広島の6本の川と河岸緑地はパネラーの皆さんが褒めていました。きれいな水面と親水護岸、水辺のカフェテラス等は広島の財産です。水上タクシーや水辺の遊び場等、海とつながる川の利活用を図れば、平地と川と海の一体化が進み、より広島らしさを発揮できるのではないかと思います。
広島ブランドの筆頭は平和記念都市です。平和公園を核として市内全域に浸透させる必要があります。平和を希求する心が窺える配慮を至るところに散りばめるのはいかがでしょう。

平和と娯楽は共存します。スポーツやレジャー等の楽しみは平和でなければ味わうことはできません。よく平和施設と娯楽施設を相反する施設として取り扱うケースがありますが、間違っています。
パチンコ店の中に祈りのコーナーがあってもよいと思います。例え、パチンコが入りますように!と私欲の願いであっても、祈りの行為は心が穏やかになります。

丹下軸線上の広島平和資料館本館のピロティに立って、原爆ドームを眺めると自然に手を合わせています。原爆ドームに対面する場所を意図的に作って気づきの機会を増やしてはどうでしょう。原爆ドームを見ると心が洗われる気がします。
街をきれいにしよう!とか、緑を増やそう!とか、スローガンばかり掲げても前進しません。具体的な数値目標を立てて、その実現のための計画を実行することです。そのように導くのがトップの仕事だと思います。

*ちょっとコーヒーブレイク : 『平和記念都市ひろしま

  (2012.12.1 記載)   
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